核が題材となった 映画作品を 紹介

過去知りうる限りにおいて

風が吹くとき

エンド・オブ・ザ・ワールドも大概衝撃を受ける作品となっていますが、それ以上に衝撃を通り越して誰も彼も救われない、こんな悲劇がそうそうあるかと言いたくなる作品があります。こちらもまた核戦争による被爆によって放射能汚染による深刻な状況になりながらも、いつもどおりの日常を過ごすというもはや異質の作品がある。しかも驚いたことに児童文学に分類されるというから驚きだ、何のことかこれだけいえば想像がつく人もいるでしょう、そう『風が吹くとき』だ。

筆者は今作を知ったのは今から数年前の話になります、児童文学というものは確かに幼少期は親の勧めで見ていた事もあったが、風が吹くときについては皆目知らなかった。絵柄はカントリーチックな表現で、外国の片田舎で暮らしている老夫婦の物語というあらすじを見たときには、まさかこんなにベリーハードでロックすぎる内容になっているとは見当も付かなかったものです。絵本というカテゴリーの中で鬱展開ベストテン入りは確実だとまで言われている今作ですが、簡単にあらすじから見ていこう。

作品概要

あらすじ

イギリスの片田舎で年金暮らしをしている老夫婦のジムとヒルダは今日も日がな一日を過ごしていました。彼らにとって日常は目の前にあるものだけであり、世界情勢は流される情報だけでほぼ他人事のように捉えていました。

そんな二人の穏やかな日々とは打って変わって世界情勢は悪化の一途を辿っており、何時戦争が起こってもおかしくない状況までに至ります。やがて開戦の報せを耳にして、核爆弾が使われる可能性をラジオで耳にしたジムは政府から発行された『Protect and Survive』を元にして自宅に避難場所を設置していく。そんな夫の様子を呆れて眺めるヒルダだったが、ある時イギリスに核爆弾の投下が行われることが告知されます。

ジムはヒルダに用意した屋内避難所へ来るよう指示するも、オーブンをつけたばかりだと言って聞かないため無理やり連れ込んだ。雪崩れるようにして倒れこんだ次の瞬間、圧倒的な暴風と熱線はジムたちの家を真っ二つに切断するように襲いかかります。辛うじて自宅の倒壊は免れ、二人は無事助かります。

だがこの時までまだ二人は呑気に構えていた。いずれ誰かが助けに来る、それまで『いつも通り』生活していようと決断した。それが二人を着実に死に至らしめるとも気付かずに。

楽天的な老夫婦の日常

核戦争に巻き込まれた老夫婦の話となっているので、最初はどんな逆境であっても乗り越えていこうとする力強い話なのかと思えば、そんなものではなかった。何せ異常事態にも関わらず、いつも通りの日常を本当に過ごそうとするジムとヒルダを見たとき、絶句したものだ。何してんだよと、一刻もそこから離れるだけの努力をしないのかと、突っ込みたくなったものです。

普段から夫婦は似た者同士と言わんばかりに楽天的な思考で物事を見ていただけに、戦争が始まるということにも全く実感を持っていなかった、これについては分かる気がする、2003年に開戦したイラク戦争についても日本人からすれば大半が他人事として捉えていたに違いない。ですがジムとヒルダは戦争を一度その身で経験しているにも関わらず、懐かしい思い出としか見ていなかった時点でこの二人の異常さが際立っています。

極めつけは

そして極めつけはジムの行動があまりに理屈の通じない、今でこそ科学的検証がなされて意味が無いとされていたことを行っていた。けれどそれは彼が悪いのではなく、当時実際のイギリス政府が国民に向けて配った『Protect and Survive』を元にしての行動だったのです。しかも、これが現実に配られていたというのだから驚きだ。内容は実際に見てもらった方が早いが、風が吹くときの作中でジムがやっていることを、パンフレットが配られていた人々は政府の言うとおりに実践していたと考えると、プロパガンダに似た洗脳行為と言っても良い。

今でこそ間違いだと認められているが、お上の言うことだけを鵜呑みにして行動することの危うさを物語っています。

爆発が起きても

辛うじて爆発から逃れることが出来たジムとヒルダ、恐らくこれで助かったと認識していたに違いないでしょう。この直後に起こす二人のアクションがあまりに日常と遜色ない生活を過ごしていこうとするのだから、唖然としたものだ。開いた口が塞がらないとはこのことを言うのかと思いもしたが、ジムのように政府からの通達を真に受けている人視点で見ればそれも仕方がないかもしれないと、そう分析できる。